
こんにちは、kickflow QAチームの川村です。
「開発チームからQAへの依頼がSlackで埋もれてしまう」「チケットのステータス管理が煩雑で、今どの段階にあるかわかりにくい」といった課題を抱えていませんか?
本記事では、kickflowのQAチームがAsanaとSlackを連携させて構築したチケット管理ワークフローをご紹介します。
開発からリリースまで、情報が自然と流れる仕組みを実現しています。
背景:なぜAsana・Slack連携を構築したのか
kickflowはフルリモート・フルフレックスの企業です。
メンバーが異なる時間帯に働くことも多いため、タスクの依頼を非同期で行える仕組みが必要です。
また、非同期コミュニケーションでは一度依頼が漏れると拾いにくいため、漏れない仕組みづくりも重要でした。
以前は以下のような課題がありました。
- 依頼の見落とし:SlackでのQA依頼が他のメッセージに埋もれてしまう
- ステータスの不透明さ:チケットが今どの段階にあるか確認に手間がかかる
- 手動作業の多さ:ステータス変更のたびに関係者への連絡が必要
これらの課題を解決するため、AsanaとSlackを中心としたツール連携を構築しました。
連携の中継役としてZapierを活用し、インフラ管理なしで複数ツール間の自動化を実現しています。
ツール連携の全体像
まず、チケット対応の全体フローを図で示します。
flowchart TB
subgraph Dev["開発フェーズ"]
D1[👨💻開発者: 機能実装]
D2[👨💻開発者: PR作成・Asanaタスク紐付け]
D3[👨💻開発者: QA requiredラベル付与]
D4[🔄自動: GitHub→Asana PR is openコメント]
D5[🔄自動: Zapier→Asana ブランチ名コメント]
end
subgraph Request["QA依頼フェーズ"]
A1[👨💻開発者: Asana QAステータスに変更]
S1[🔄自動: Asanaルール→Slack通知]
S2[🔄自動: Zapier→Slackリスト追加]
end
subgraph Design["テスト設計フェーズ"]
T1[🕵️QA: Slackリアクション→AIテスト設計起動]
T2[🤖AI: テスト観点生成<br>(ホワイトボックス観点)]
T3[🤖AI: GitHub テスト項目書Issue作成]
T4[🕵️QA: 観点追加<br>(ブラックボックス観点)]
T5[🕵️QA: Slackリスト設計完了]
end
subgraph Review["レビューフェーズ"]
R1[🕵️QA: 内部レビュー依頼]
R2[🕵️レビュワー: Slackリアクション→AIレビュー起動]
R2b[🤖AI: GitHub Issueにレビュー観点コメント]
R3[🕵️レビュワー: フィードバック]
R4[🕵️QA: 修正]
R5[🕵️QA: Slackリスト内部レビュー完了]
R6[🕵️QA: 開発者レビュー依頼]
R7[🕵️QA: Slackリスト開発者レビュー完了]
end
subgraph Exec["テスト実施フェーズ"]
E1[🕵️QA: テスト項目書に従って実施]
E2{結果判定}
E3[🕵️QA: Asana Bugチケット起票]
E4[👨💻開発者: 修正→QA中]
E5[🕵️QA: 修正確認]
E6[全項目Pass & バグ修正確認完了]
E7[🕵️QA: Asana QA完了に変更]
E7b[🔄自動: Zapier→Slackリスト QA完了]
E8[🕵️QA: QA Doneリアクション]
E9[🔄自動: Zapier→GitHub PRラベル更新]
end
subgraph Release["リリースフェーズ"]
L1[👨💻開発者: 夕会でPRをマージ]
L2[🔄自動: GitHub→Asana ~mergedコメント]
L3[🔄自動: Zapier→Asana リリース準備中]
L4[🔄自動: Zapier→Slackリスト完了]
L5[🔄自動: 統合ブランチ→Sandboxデプロイ]
L6[🔄自動: E2E・APIテスト実行]
L7{テスト結果}
L8[👨💻開発者: リリース]
L9[👨💻開発者: リバート or 修正]
L10[👨💻開発者: Asana完了に移動]
end
D1 --> D2 --> D3 --> D4 --> D5
D5 --> A1
A1 --> S1 --> S2
S2 --> T1 --> T2 --> T3 --> T4 --> T5
T5 --> R1 --> R2 --> R2b --> R3 --> R4
R4 --> R5 --> R6 --> R7
R7 --> E1 --> E2
E2 -->|Fail| E3 --> E4 --> E5 -.-> E1
E2 -->|Pass| E6 --> E7 --> E7b --> E8 --> E9
E9 --> L1 --> L2 --> L3 --> L4
L4 --> L5 --> L6 --> L7
L7 -->|Pass| L8 --> L10
L7 -->|Fail| L9 -.-> L8
このフローでは、以下のツールが連携しています。
| ツール | 役割 |
|---|---|
| Asana | チケット管理・ステータス管理 |
| Slack | 通知・コミュニケーション・自動化トリガー |
| Slackリスト | QAチケットの進捗可視化 |
| GitHub | ソースコード管理・PRラベル管理・テスト項目書Issue |
| Zapier | ツール間連携の中継 |
| AI(Devin等) | テスト設計・ケースレビューの支援 |
各フェーズの詳細
1. 開発フェーズ
開発者は機能実装後、以下の操作を行います。
- PR作成時にAsanaタスクを紐付け:PRの説明欄にAsanaタスクのリンクを記載
- QA requiredラベルを付与:手動QAが必要なPRにラベルを付ける
- PR Open時の自動連携:
- GitHubとAsanaの連携により、Asanaに以下のようなコメントが自動追加
fix: 〇〇の不具合を修正 is open: https://github.com/hoge/fuga/pull/XXXXX - このコメントをZapierが検知し、PRのブランチ名をAsanaにコメント
- GitHubとAsanaの連携により、Asanaに以下のようなコメントが自動追加
【開発者の操作】 1. PRの説明欄にAsanaタスクのリンクを記載 2. QA requiredラベルを付与 → 以降はZapierが自動でブランチ名をAsanaにコメント
ブランチ名がAsanaに記録されることで、QAエンジニアがテスト環境へのデプロイ時に対象ブランチをすぐに特定できます。
2. QA依頼フェーズ
開発者がAsanaでチケットを「QA」ステータスに変更すると、以下が自動実行されます。
- Asanaのルール機能:SlackのQAチャンネルに通知
- Zapier:ステータス変更を検知し、Slackワークフローを起動→Slackリストにタスクを追加
【自動化の流れ】
Asana: QAステータスに変更
↓
Asana Rule: Slackチャンネルに通知
↓
Zapier: Slackワークフロー起動
↓
Slackリストにタスク追加
QA担当者はSlack通知でQA依頼を認知し、Slackリストで担当チケットを確認できます。
3. テスト設計フェーズ
テスト設計はAIと人間のハイブリッドで行います。
AIによるテスト設計(ホワイトボックス観点)
- QA担当者がSlackの通知メッセージにAIテスト設計起動用のリアクションを付ける
- AIがPRの差分やコードを分析し、テスト観点を生成
- 生成完了後、GitHubにテスト項目書のIssueが作成され、Slackに通知
【AI設計の流れ】
Slackメッセージにリアクション
↓
AIがコード差分を分析
↓
テスト観点を生成(ホワイトボックス観点)
↓
GitHubにテスト項目書Issueを作成
↓
Slackに完了通知
人間によるテスト観点追加(ブラックボックス観点)
AIが生成した観点をベースに、QAエンジニアが以下の観点を追加します。
- 既存のテスト項目書を参照した項目の追加
- 仕様書に記載の観点
- ユーザー視点での観点
- その他必要な観点
設計が完了したら、Slackリストのステータスを設計完了に更新します。
4. レビューフェーズ
テスト設計のレビューは2段階で行います。
依頼はすべて、最初のQA依頼があったSlackメッセージのスレッドで行います。
内部レビュー
- QAチームの内部レビューを依頼
- レビュワーがSlackメッセージにAIケースレビュー起動用のリアクションを付ける
- AIがGitHubのテスト項目書Issueにレビュー観点をコメント
- AIによる観点とレビュワーによる観点を考慮し、設計者にフィードバック
- 設計者が修正
- 再度レビュワーに依頼し、承認されたら内部レビュー完了
開発者レビュー
- 開発者にケースレビューを依頼
- 指摘があればケースを修正
- 承認されたらテスト項目書の作成完了→開発者レビュー完了
【レビューの流れ】
内部レビュー依頼(Slackスレッド)
↓
レビュワー: AIレビュー起動(Slackリアクション)
↓
AI: GitHub Issueにレビュー観点コメント
↓
レビュワー: AI観点 + 自身の観点でフィードバック
↓
設計者: 修正
↓
Slackリスト: 内部レビュー完了
↓
開発者レビュー依頼(Slackスレッド)
↓
フィードバック・修正
↓
Slackリスト: 開発者レビュー完了
5. テスト実施フェーズ
完成したテスト項目書に従ってテストを実施します。
コミュニケーション
開発者への問い合わせやブロッカーになりうる不具合があれば、最初のQA依頼があったSlackメッセージのスレッドで連絡します。
これにより、1つのチケットに関するやり取りが1つのスレッドに集約されます。
不具合検知時
- AsanaのBugプロジェクトにチケットを起票(改善提案も同様)
- 開発者が元の開発ブランチからfeatureブランチを切って修正
- 修正完了後、バグチケットがQA中になりSlack通知が来る
- QA担当者が修正確認を実施
QA完了
以下の条件を満たしたら実施完了です。
- 全てのテスト項目の実施が完了
- リリースブロッカーになるバグの修正確認が全て完了
完了したら:
- AsanaのチケットをQA完了ステータスに変更
- Zapier + Slackワークフローにより、Slackリストも自動でQA完了に更新
- 最初のQA依頼メッセージに「QA Done」リアクションを付ける
- ZapierがリアクションをGitHub PRのラベルを更新(QA required → QA Done)
6. リリースフェーズ
マージからリリース準備
- 夕会でQA DoneラベルのついたPRをリリースブランチへマージ
- マージされるとGitHub→Asana連携で、Asanaに「PR hogehoge is merged」コメントが自動追加
- Zapierがこのコメントを検知し、Asanaのステータスをリリース準備中に変更
- リリース準備中になると、Zapier→Slackワークフロー連携でSlackリストから対象の項目を完了にする
これにより、Slackリストには常に「対応中のチケット」のみが表示され、クリーンな状態が保たれます。
自動テストの実行
- 夕会で統合ブランチにマージされると、統合ブランチが自動でSandbox環境にデプロイ
- その晩から早朝にかけてE2EテストとAPIテストがSandbox環境で自動実行
翌朝の確認
- 翌朝、担当QAエンジニアがE2Eテストの結果を確認
- 不具合を検知した場合:
- エラー事象が記載されたSlackメッセージにSlackリアクションを付ける
- AIによる原因調査jobが起動し、今回の統合ブランチのどのPR・チケットが要因かを調査
- QAが調査結果を元にAsanaにバグチケットを起票する
- 開発者に確認依頼する
リリース
- 問題なし:開発者がリリースを実行
- 問題あり:リバートまたは修正してからリリース
- リリース完了後:リリース担当の開発者がAsanaのチケットをリリース準備中から完了に移動
Zapierによる自動化の全体像
ツール間の連携にはZapierを活用しています。
Zapierを選んだ理由は、インフラ管理が不要で、Asana・Slack・GitHubといった主要ツールを簡単に中継できるためです。
現在、QA業務に関連するZapは18個稼働しています。
代表的なものを紹介します。
| Zap名 | トリガー | アクション |
|---|---|---|
| Github PRのブランチ名通知 | Asana: 「is open」コメント検知 | Githubからブランチ名を取得し、Asanaにブランチ名をコメント |
| Slackリスト自動追加 | Asana: QA中ステータス | Slackワークフロー→リスト追加 |
| SlackリストQA完了更新 | Asana: QA完了ステータス | Slackワークフロー→リストQA完了 |
| PRラベル自動更新 | Slack: QA Doneリアクション | GitHub: ラベル変更 |
| リリース準備中自動変更 | Asana: 「~merged」コメント検知 | Asana: ステータスをリリース準備中に変更 |
| Slackリスト自動完了 | Asana: リリース準備中ステータス | Slackワークフロー→リスト完了 |
Slackリストの進捗管理
Slackリストには以下のステータス列があり、QAの各フェーズを可視化しています。
- テスト設計
- 内部レビュー
- 開発レビュー
- テスト実施
- QA完了

リリース準備中になると自動で完了するため、リストには常に対応中のチケットのみが表示されます。
AIの活用ポイント
本ワークフローでは、AIを2つのポイントで活用しています。
1. テスト設計(ホワイトボックス観点)
AIがPRのコード差分を分析し、テスト観点を自動生成します。
コードの変更箇所に基づいた観点(ホワイトボックス)を効率的に洗い出せます。
2. ケースレビュー
レビュワーがAIによるケースレビューを起動し、観点の抜け漏れをチェックします。
AIの観点と人間の観点を組み合わせることで、レビューの質を向上させています。
【AI活用の考え方】 AI: ホワイトボックス観点(コード差分ベース) 人間: ブラックボックス観点(仕様・ユーザー視点ベース) → ハイブリッドで網羅性を確保
導入の成果
この連携を導入したことで、以下の成果が得られました。
1. QA依頼の見落としゼロ
Slack通知とSlackリストにより、QA依頼を見落とすことがなくなりました。
フルリモート・フルフレックス環境でも、非同期でQA依頼が確実に伝わる仕組みが実現しています。
2. ステータスの可視化
Slackリストの進捗管理により、チケットの状態が一目でわかるようになりました。
「今どの段階?」という確認のやり取りが不要になり、各自が都合のよいタイミングで状況を把握できます。
3. コミュニケーションの集約
1つのチケットに関するやり取りがSlackの1スレッドに集約されるため、情報が散逸しません。
後から経緯を追いやすく、引き継ぎもスムーズです。
4. 手動作業の削減
Zapierによる自動化で、ステータス変更に伴う通知やラベル更新が自動化されました。
開発者はPRにAsanaリンクを貼るだけで、その後のフローが自動で進みます。
5. Slackリストの自動クリーンアップ
リリース準備中になると自動でSlackリストから完了するため、常に「今対応すべきチケット」だけが表示されます。
まとめ
AsanaとSlackを中心としたツール連携により、開発からリリースまでシームレスなワークフローを実現しました。
- Asana:チケット管理とステータス管理の中心
- Slack:通知・コミュニケーション・自動化のハブ
- Slackリスト:QA進捗の可視化
- GitHub:ソースコード管理・PRラベル・テスト項目書Issue
- Zapier:ツール間連携の中継役
- AI:テスト設計・レビューの効率化
ツール同士を適切に連携させることで、情報が自然と流れる仕組みを作れます。
フルリモート・フルフレックス環境でも依頼が漏れず、ステータスが可視化される仕組みは、非同期コミュニケーションの課題解決に有効です。
QAプロセスの効率化にお悩みの方の参考になれば幸いです。
kickflowのQAチームでは、ツール連携による効率化だけでなく、品質保証プロセス全体の改善に取り組んでいます。
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